インサイト 2017-08-30

ID-POS時代の顧客分析③ カテゴリをどのように捉えるか:磯田 たみよ

isoda

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モノが売れない時代に突入して、従来のカテゴリの枠に収まらない商品群が、たくさん出るようになったと思いませんか。ファッションではビスチェブーパン、家電ではスロージューサーコンベクションオーブン、美容では口にくわえる表情トレーニング機器など、新しい用途や体験を創出する商品が多く生み出されています。ルンバが出た時も、すぐに「ロボット掃除機」というカテゴリが生まれました。ユーザーはこれらの商品を、どのように認知するのでしょうか。

カテゴリによって売れ方が変わる

何がどのように売れたかをみるにあたり、単品だと大局的な把握が難しいので、カテゴリ単位に傾向をみます。これは売れた結果を「枠」に当てはめる発想ですが、実はカテゴリ体系は、売れ方自体に関与するものです。カテゴリの設定により、売れ方が変わるということです。

たとえば、掃除機カテゴリを【キャニスター型/スティック型】と分けた場合と、【サイクロン式/紙パック式】と分けた場合を考えてみて下さい。

ここに「単身用に手軽に使える掃除機を買いたい人」が来たら、前者では【スティック型】、後者では【サイクロン型】を選ぶと思います。(もちろんズボラな人に今一番の人気はロボット掃除機ですが!)【コード付掃除機/コードレス掃除機】なら、コードレスを選ぶでしょう。
つまり、カテゴリに表れる商品特徴の違いから、よりニーズに合致するほうを探すのです。

実は掃除機のジャンルでは、現在次のようなカテゴリ構成が主流になっています。

サイクロン」はダイソンが持ち込んだ論点ですが、論点としてはもう古く、いまはロボット掃除機か否かが第一選択事項になっています。また、レイコップ布団クリーナーの出現により、掃除機ジャンルにおいて布団クリーナーというカテゴリが立つようになりました。さらにテレビ通販から火がついたハンディクリーナースチームクリーナーもポジションを確立しつつあります。
商品は、どんどん進化していきます。カテゴリは、これをユーザーに対してガイドするものであるべきです。

ユーザーは商品を群で捉える

ユーザーは、ぼんやりとした商品イメージを持って、買いに来ます。そしてカテゴリをみてイメージを具体化しながら、ほしい商品を探します。ユーザーが持っている漠然としたイメージに対して「あなたが探しているのはこういうタイプの商品ですよね?」とお伺いを立てるように商品を面でみせるのが、カテゴリの役割です。
つまりカテゴリは、ユーザーに商品選択の観点を与えているのです。

カテゴリは、ユーザーにとって「商品概念そのもの」です。
あるテーマで括られた商品群を「面」で見せられることで、そこから共通の特長を読み取り、差異を見比べて、ひとつの商品を選びます。買う商品が型番レベルで決まっていない限り、このプロセスは必ず必要です。該当する商品を1つだけ見せられても、まず買いません。

これは販売側からすると、有難い傾向です。
類似の特長がある「かたまり(商品群)」から選んでもらったほうが、特定の単品を指名されるより、売りやすいからです。ポイントは、ユーザーが買いたいと思える商品群を、いかに上手く「かたまり(商品群)」で見せられるか、にあります。この点で、分析において「かたまり(商品群)」の企画である「カテゴリ」や「MDテーマ」に対する評価が、大変重要です。
たとえば、「ボリューム袖」デザインの商品を訴求する場合、以下のように対象商品を並べて見せれば、説明不要でわかります。

また、今インスタグラムでは、部屋での自撮りに欠かせない「可愛いパジャマ」が人気ですが、こういった「見せパジャマ」は、従来の「パジャマ」「ルームウェア」とは別ものなので、その商品群だけを抜き出してみせるためのカテゴリやキーワードタグが必要です。

カテゴリを分析する時の観点

分析を行う際は、上記のような背景を理解し、必要であれば分析用のカテゴリを別途設定します。
カテゴリの見直しが必要なケースは、実績が一か所に集中したり、散らばりすぎて全体が見えにくい時です。

売れ方とカテゴリ体系にギャップを感じる場合も、見直しを検討します。先ほどの掃除機の例でいうと、ユーザーはキャニスター型/スティック型/ロボット型で選んでいるのに、カテゴリは紙パック式/サイクロン式・・となっているようなケースです。
この場合はデータから導き出すというより、市場トレンドを勘案して、別の分類を持ち込み検証するということになります。売れ方を分析した結果、カテゴリを変えたほうがよい、という結論に至るケースもあります。

最近のECでは、基本導線となるカテゴリはできるだけ粗くして、短サイクルで変わるMDテーマ商品特徴を、キーワード・タグとして別途設定することで、商品群のテーマを「面」でみせる工夫がなされています。このキーワード・タグが、非常に重要なのですが、データとして入手できないケースがあるため、注意が必要です。ECの場合は、アクセスログからつかむことが可能ですが、店舗の場合は、棚割や商品企画時のMDテーマをデータ化する手段を検討する必要があります。

ひとつのカテゴリにおいて、配下の商品構成により、単品の売れ行きが左右されるといった現象も起こります。有名な2:8の法則ですが、カテゴリで括った上位2割の商品が8割の売上を占める場合、売れていない8割を取り下げると、売れていた2割の商品が売れなくなる、といった現象です。
いわゆる「カテゴリ・マネジメント」の考え方ですが、これについては次回、お話しします。

コンサルタント

磯田 たみよ

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