インサイト 2017-06-20

ID-POS時代の顧客分析② 定性的な仮説を定量化する:磯田 たみよ

isoda

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前回 は「よいお客様」と「そうでないお客様」を分けたうえで、よいお客様の行動を深堀りしましょう、という話をしました。今回は、深堀りするときのコツについて、お話しします。

仮説を出し、これを定量化するためのフラグを追加する

お店が取り扱う商品や価格の幅が広いほど、「よいお客様」は複数のタイプに分かれます。
もっとも簡単なのは、よく買うジャンルやカテゴリで分ける方法です。

●ファッション・ユーザー
●ライフスタイル・ユーザー
●コスメ・ビューティ・ユーザー

といった分け方です。たとえば、こんなKPI比較ができます。

別の視点では、買い方からの分類もあります。

●ギフト買いユーザー
●バーゲンハンター
●ご褒美買いユーザー

といった分け方です。

いずれにしても、商品×買い方の違いで、いくつかのセグメントに分けてみることで、よいお客様のイメージが具体的になり、育成シナリオを描きやすくなります。

これを簡単に識別するために、データにフラグを付与します。
この、「仮説を定量化するためにフラグをふる」といった行為は、売場、商品/カテゴリ、ユーザー、この3つをよく理解しないと、できません。

たとえばシーズン始めに買う「シーズン先取りユーザー」を、次のように定義します。

この人の購買データを識別するために、「シーズン先取り購入フラグ」を追加します。
フラグ付けする条件となる閾値(対象期間や全購入の何割以上とするか)は、データの出方をみつつ、その背景を推測しながら、決めていきます。

現実のデータは、少々いびつであったり穴があったりします。
売場や商品を理解せずに、いきなりデータの出方だけで決めると、閾値を読み違います。

まず先に「シーズン先取りユーザーが大事である」という売場意志への理解があり、
これに基づいた売場展開のイメージができて、
たぶんこの時期にくるだろうという、ユーザーへの理解があって、
データの出方をみる、という順番です。

こういったフラグを、考えられる限りいくつも、追加するのです。

仮説検証のためのフラグから、わかること

シーズン先取りユーザーがデータ上識別できるようになると、たとえば以下のようなことが、定量的に把握できるようになります。

●シーズン先取りユーザーのLTVは、全体より高いか低いか
●シーズン先取りユーザーは、バーゲン期にも買うのか
●どういった商品を買っているのか
●まとめ買いしているのか、特定期間中に何度も買うのか

購買行動に特徴がみられない仮説は、どんどん捨てていきます
最初に思いつく限りのフラグを追加しても、データを見ていると、新たに思いつくことがあって、また違うフラグを追加して定量化する、といったことの繰り返しになります。
フラグ追加⇒クロス集計、を繰り返しながら、頭の中でユーザー像とその購入マインドについて具体的なイメージを作る、というプロセスです。
売場、商品/カテゴリ、ユーザーへの理解が試され、深まるプロセスでもあります。

この段階では、できるだけスピーディにたくさんやったほうがよいので、あまり正確さにこだわらないほうがよいようです。
正確さに注意を払って集計するのは、仮説が絞られたレポーティングの段階です。

ロイヤル化途上のお客様に特徴が出る

前にもお伝えしたとおり、ロイヤリティがあがりきったお客様は、カテゴリを横断して買い、高頻度でリピートするという点で、似たような購買行動になっていきます。
よいお客様をタイプ分類する場合、この超ロイヤルなお客様は除外したほうが、傾向が出やすくなります。
初期ユーザーの育成シナリオを考えるにあたっては、ロイヤル手前のお客様を、いくつかのセグメントに分けて描き、これに応じた何パターンかの育成シナリオを検討するのがよいようです。

たとえば
●初回にカラーコスメを買ったお客様には、メイク・マニア・セグメントのシナリオを適用
●これで反応が悪い場合、オーガニック・コスメ好きセグメントのシナリオを適用してみる

といった感じです。

シナリオでは、体験カテゴリ数を増やし、ユーザーの買い物の幅を広げることが重要になります。

たとえば、カラーコスメを買った初期顧客には、
1.メイクジャンル内でファンデーションへ誘導
2.ファンデーションからシートパックといった、お手入れ商品購入を通じて、徐々にスキンケアへ誘導

といった、ユーザーの期待値を少しずつ広げていくような誘導がよいようです。
ユーザーが持つ「このショップはXXを買うところ」という頭の中のショップ・ポジションを、徐々に広げていくのです。

次回は、分析・育成シナリオの観点での「カテゴリ」のあり方についてお話しします。

コンサルタント

磯田 たみよ

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