インサイト 2017-03-07

Amazonに死角はあるのか?:立岡 和彦

tachioka

インサイト(Insight) : 洞察、見識、知見

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2016年、ダッシュボタン、エコーなど画期的な商品で話題となったアマゾン。その2016年の業績が先日発表された。

​Amazonのいま​

取り扱い商品は2億点以上ともいわれるアマゾン。2017年2月末時点で下記のように多くのカテゴリの商品を展開している。
またアマゾン内へのメーカーの出店も続いており、サイト内・外でのプロモーション(集客施策)にも積極的だと伝え聞く。
メーカーが自社でECサイトを運営することの難しさは、集客と物流にある。アマゾン内であればサイトパワーの恩恵をうけ、物流も任せることができる。サイト運営や決済システムの導入・個人情報管理などの負担も大きく軽減することもでき、まさに願ったり叶ったりの存在となっているのだ。
一方アマゾンは展開商品数を増やすことができるうえ、メーカー公式のブランドストアにより消費者にとって安心感を与えることもできる。出店者が集客施策を行うことでサイトの訪問者も増え、回遊すればサイト内売上の向上も期待できる。メーカー・アマゾンにとって好循環が生まれているのではないだろうか?

​Amazon​・Japanの売上高推移

先日の業績発表をうけた2012年~2016年の5年間の売上高推移は下記となった。
この5年間ではドル換算で約3,000百万ドルの売り上げアップとなっている。
上記に年間平均為替レートを掛け合わせ、円換算したものが下記となる。
この5年間で約5,500億円の伸長を記録し、2016年度はついに1兆円を突破した。2012年比では189%となる。2017年は伸長率20%、1$=113円で試算すると、1兆4000億円近くになりそうだ。
アマゾン・ジャパンの売上には「第三者による販売手数料」が含まれている。手数料を10%程度と想定し、アマゾンを通して購入された2016年の総流通額は1兆8000億円程度と推計する有識者もいる。この仮説に伸長率20%で試算すると、総流通額の2兆円越えが見えてくる。

​Amazonと楽天市場の会員メリット比較​

巨大ECサイトとして比較されることの多いアマゾン楽天市場。私自身も宅配ボックスのあるマンションに居住しているため、両サイトでの購入金額・件数も年々増えているヘビーユーザーだ。1ユーザーとして両サイトの使い分けの視点を考えると下記となった。

アマゾン・プライム会員 : 早い、送料無料
楽天会員        : 安さ、ポイントの利用

プライム会員としてのメリットは、やはり送料無料、日時指定等であろう。今日注文したものが明日には届く・・・ことは特に利便性が高い。文具や飲料などちょっとしたもの、かつ、送料が商品金額に対して高く感じるものも気兼ねなく購入している。一方楽天は比較的高額なものの購入時に、ポイントを含めた価格の比較を行い購入に至っている。アマゾンもポイント制度があるが、微々たるもの。ほとんど考慮していない。

また両サイトへのユーザーとしての不満は下記である。

アマゾン : 過剰包装・梱包
楽天市場 : アイテム管理・送料表示・土日対応

アマゾンにおいては発送事故防止のためだと思うが、総じて商品の大きさに対し梱包の箱が大きい。前述したちょっとしたもの、も過剰に梱包されてくることも多く、段ボールの廃棄は負担となり罪悪感を感じることすらある
楽天に関しては、サイト構成上同じ商品がずらっと表示されることが多く、UI・UXの課題であると感じる。送料を含んだ価格の比較は、商品紹介ページ、またカートに商品投入後でしかわからない場合もある。いざ購入を決めても土日の対応がされないことも多い。金曜夜遅くに注文した場合、アマゾンなら土曜に届くものも多いが、楽天の場合は翌月曜に発注処理され、火曜に発送手配→水曜以降に届く、ということがほとんどである。衝動的な「今欲しい」「明日欲しい」という購入意欲を満たされない
私のような価格検討のユーザーは、サイト利便性を高めると回遊せずに離脱してしまう可能性が高まる。結果として、サイトの売上が下がることにもつながりかねないため、UIの改善は簡単に意思決定できないのであろう。

ユーザーの体験・ウォンツにこだわり続けるアマゾンと、顧客囲い込みのためのポイント付与を軸とし出店者(テナント)を見る楽天顧客中心マーケティングの実践できているかどうか・・・縦割りの組織、保身のために一歩が踏み出しにくい日系企業には耳の痛い事例ではないだろうか?

​ターゲット​は顧客の24時間

アマゾンの巨大化、総流通量の増加が配送業者を直撃していることはご存知の通りだ。アマゾンの継続的な成長に物流・配送の改革は必須であり、ドローンや自動運転による新しい配送システム構築のチャレンジも理解できる。ただ法規制が厳しく、交通網が細かい日本においてドローンや自動配送の実現は厳しいと私は考えている。今のままではECを軸とした成長はここ数年で頭打ちを迎えるだろう
一方で「配送」の心配がないサービスはこれからの成長の軸となっていく。プライムビデオ・プライムミュージック・電子書籍といった、電子コンテンツは在庫管理の手間も少なく、配送の負担はゼロだ。私自身もプライムビデオの利用に際し、HULUを解約したが同じようなユーザーが増えていくであろう。

顧客の可処分時間への浸透は、日系企業が取り組み切れていないテーマだ。コンテンツを軸とし、可処分時間へ入り込むことは顧客のエンゲージメント向上=ファン化にもつながる。結果として、これからアマゾンがしかける新しい取り組みを好意的に受けとめ、垂直立ち上げもうまくいく可能性は高まる。
SNSを見ると既にワクワクした気持ちをもってアマゾンの新サービスや動向を注視し、シェアする友人も多く感じる。
そしてビジネスの世界においてもクラウド事業のAWS(AmazonWebService)が成功し収益の柱となり、企業向けビデオ会議システム「Chime」も立ち上がった

2017年も続々と新サービスをリリースしてくるであろうアマゾンに死角があるのか?

顧客に最高の体験を提供しようとチャレンジし続ける限りは、成長は止まらないのだろう。彼らのターゲットは私たちの「24時間」であり、まだ未開拓な市場・伸びしろは十分にある。利便性の高いサービスを拡充し続け、アマゾンに触れる「アマゾン・タイム」が広がることで、アマゾン=買い物だけでなく、生活の大部分と密接にかかわる巨大インフラ企業になる日は近い

UI/UX戦略推進チーム
コンサルタント

立岡 和彦

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