インサイト 2016-12-20

「ワインを買うならこっちの店」ができるまで:福島 江里奈

fukushima

インサイト(Insight) : 洞察、見識、知見

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このカテゴリーだけは他店に負けない!が伝わりました

数週間前、最寄りのスーパーから少し離れたところにあるスーパーがリニューアルオープンしたのでどんなものかと試しに行ってみました。什器や床材や照明などの内装が全面的に変わっていましたが、売り場のゾーニングはほとんど変わっていませんでした。

では、何が記事にするほど印象に残ったかと言うと、ワイン売り場が見違えるほど魅力的になっていて、それによって、いつも利用するスーパーが変わるというロイヤリティが崩れる体験をしたことです。

今まで「どっちで買っても大して変わらないなら近いほうがよい」という程度で店を選んでいたものが、「ワインを買うならこっちの店まで行こう」という選択に変わり、ワイン好きな筆者は、自然とこちらのスーパーを使う回数が増え、今まで利用していたスーパーに行かなくなりました。まさに、スーパーの乗り換えです。

おそらくワイン売り場も大きさは以前とほとんど変わっていません。
しかし、ぱっと見渡して「ワインが充実している」と感じる品揃えとPOPで接客力を上げていました。筆者が売り場から感じとった提案は次の3つです。

  1. ここはワインに本気の売り場です。
  2. 特にこだわりがないのなら定評のあるワインからどうぞ。
  3. 料理が決まっているのなら、それに合わせて提案します。

1つ目の提案がこちら。

スーパーのワイン売り場に本が置いてあることに衝撃を受けました。雑貨やファッションの売り場で関連する本が一緒に置いてあることはよくありますが、こんな食品スーパーにまで!と思わず手に取ってみたくなります。この本の他にもいくつか置いてあり、売り場を作った人の意気込みが感じられます。
20161220UPインサイト_本の画像_2

2つ目の提案がこちら。

NIKKEIプラス1でランキングに入賞していた商品を棚の一番上にPOPを付けてまとまった数陳列しています。他の商品が1列なのに対して、この商品は3列なので、それだけで売れ筋であることが伝わります。文字だけでなく、ボリュームでも説得力を感じます。
20161220UPインサイト_ランキング_2

3つ目の提案がこちら。

料理の材料を一通り揃えた人に対して、「この料理に合うのはこのワインです」と味のポジショニングマップとともに誘導しています。食材売り場に行く前にこのPOPを見た人には、料理を決めるきっかけになるかもしれません。ちゃんと赤ワインバージョンと白ワインバージョンがありました。

↓赤ワインバージョン
20161220UPインサイト_POP_2

↓白ワインバージョン
20161220UP_白ワイン_2

また、このPOPの下にある各商品の横には、個別におすすめ料理のPOPがついています。
20161220UPインサイト_アップ

ワインに詳しい人は、放っておいても自分でラベルを見て産地や味のバランスなどから料理に合ったワインを見つけ出せるのでどんな売り場でも構わないかもしれませんが、そうでない人にとっては、こうやって丁寧に誘導してくれることが店選びを左右するポイントになるのではないでしょうか。特にワインは製法や産地や製造年などの様々な要素でテイストに違いが生じ、それを楽しむものでもあるので、提案の幅に信頼が得られればリピーターを獲得できる可能性は高いです。

このスーパーはすべての食材においてここまで本気で視覚的な接客してくるわけではなく、ワインとチーズとスパイスの売り場でだけ特別に本気度が伝わってきます。おそらくこのカテゴリーにおいては近隣の他のスーパーに負けない品揃えを意識しているのだと思います。これこそ地域のカテゴリーキラーだなと感じました。

ワインという商材は特別なのかもしれません。ネットで検索すれななんでもECで買える時代ですが、ワインの場合、決まった商品をいつもリピートする人、ラベル見ながら商品名で検索して買う人、とりあえずいろいろな種類をセットでまとめ買いをしたい人以外は、なんとも検索しづらい商材だなと思います。だからこそ、リアル店舗での提案力に左右されるのかもしれません。

初心者でも迷わせないENOTECAのやさしいECサイト

しかし、ECサイトでも同じようにワイン初心者にも選びやすい工夫をしているところがありました。ワイン販売大手のENOTECAのオンラインショップです。簡単にご紹介します。
1つの特集ページなのですが、初心者でも迷わずに商品詳細ページまでたどり着けるようになっています。

まず、特集TOPページでワインと合わせるジャンルを選びます。(ここではお肉を選択)
SnapCrab_NoName_2016-12-15_19-1-48_No-00画像出展元:https://www.enoteca.co.jp/gochisou/index.html?&banner=OS

次にさらに具体的に料理を選びます。(ここではハンバーグを選択)
SnapCrab_NoName_2016-12-16_12-4-27_No-00画像出展元:https://www.enoteca.co.jp/gochisou/meat.html#giftMain

そうすると、その料理にあったワインが4~5種類表示されます。(写真は検索結果の一部だけです)
SnapCrab_NoName_2016-12-16_12-8-14_No-00画像出展元:https://www.enoteca.co.jp/gochisou/answer2.html#giftMain

ここでポイントなのは、何かしらの選択肢を選ばないと商品までたどり着けないが、その選択肢がシンプルであること、そして、表示される結果には価格帯に段階をつけることではないでしょうか。最初から選択肢が複雑で数がありすぎるとストレスとなり離脱されてしまう可能性があるので、なるべく入口はシンプルに。最後のカスタマイズされた商品一覧にたどり着くまでは無駄に悩ませない工夫が親切だと感じました。

商品数が多く、取り扱いカテゴリーの幅が広いECサイトの場合、自分が見たいものだけにカスタマイズされた商品一覧を表示させるまでが一苦労になってしまうことがあります。あらゆるユーザーのあらゆるニーズに対応したい売り手側の気持ちはわかりますが、1ユーザーからすれば、その時欲しくないものはなるべく表示してほしくないのではないかと思います。入口の早い段階からユーザーのニーズを汲み取っていかにストレスなく商品一覧まで導けるかが顧客満足につながってくるのではないかと思います。

最後にファッションECで見つけた入口で迷わないサイトを2つ紹介します。

1つ目は海外のファッションEC、ASOSです。男性か女性を選ばないと商品が見えません。
しかし、TOPページで男女ごちゃごちゃと商品が並んでいるよりも、遷移先で女性なら女性ものだけ並んでいる方がストレスがないかもしれません。
SnapCrab_NoName_2016-12-15_19-14-43_No-00画像出展元:http://www.asos.com/?hrd=1

2つ目はブランド子供服のECのファミリアオンラインショップです。
年齢から4つの選択肢に分かれているので、子供服のギフトを探している人にも入口がわかりやすいです。
SnapCrab_NoName_2016-12-16_8-45-8_No-00画像出展元:http://www.ec.familiar.co.jp/

今回はワイン売り場での気づきから記事にさせていただきました。
売り場のちょっと工夫や変化が意外と日々の選択を左右する決め手になっていることはあるのではないでしょうか。1人の消費者としてなぜその選択をしているのかを振り返ると意外と考えるヒントがあるのもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございました。それでは、また。

オムニチャネル推進チーム
アソシエイト・コンサルタント

福島 江里奈

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