インサイト 2016-11-08

ファンケルの30ml容器がもたらすマーケティング効果:福島 江里奈

fukushima

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購買頻度は意図的にコントロールされているかもしれない

突然ですが、化粧水をお使いの皆さん、
「どれくらいのペースで買い足し、買い替えをしていますか?」
急にそう聞かれて正しく答えられますか?
最後にいつ買ったのか覚えていなくて、なくなりそうになったタイミングで随時買い足しているという方がほとんどではないでしょうか。安心してください、筆者もその一人です。

複数の化粧水を併用している場合はペースが一定ではないかもしれませんが、継続的に単一商品を使用している場合、内容量によってだいたいの買い足しペースが決まっており、それが無意識のうちに習慣化されていきます。

この習慣化によって顧客との接点を効果的に作っているのが、今勢いのあるファンケルです。ファンケルの化粧品は無添加なので、フレッシュ期間という使用期限があります。化粧水の場合、1本の内容量は30日分の30mlと決まっており、未開封で1年間、開封後は60日間が使用期限として指定されています。サイクルが短いので、自然と購入頻度が高くなります

そして毎回商品お届けの際に新商品やおすすめ商品が掲載されたカタログを同梱されているため、ファンケルの他の商品を目にする機会も多くなります

また、初めて購入する人に向けた送料無料のお試しキットが数種類あり、かなりお得な価格設定になっています。このお試しキットでまずは無添加化粧品を体感していただき、お試し購入から1ヶ月後にリピートがあったか、リピートの際に2ヶ月分、3ヶ月分まとめて購入していたかなどの購買履歴によってロイヤリティの高い顧客になる可能性があるかを見極めることができているのではないでしょうか。

対して、1ヵ月後に違うお試しキットを注文された場合、まだ使用感に納得していないか、他商品と比較して検討したいフェーズである可能性が高く、同梱物はカタログよりも比較対象商品だけを記載したチラシの方が効果的ではないかというようなプッシュ方法の検討にも活用できているのではないかと思います。

筆者もファンケルで数回購入をしているのですが、最初の数回までカタログは同梱されていませんでした。特定の商品をリピートし始めてからはカタログとそのリピート商品の割引クーポンが同梱されるようになりました。

■ファンケルの初回限定サイト(https://goo.gl/2ugWuU)
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もしも他社商品も一律30mlだったら?

ファンケルの1ヵ月当たりの価格は決して安くありません。しかし、30ml単位で販売しているので、他社商品と並んだ時にパッと見お手頃価格に感じられます。

以下に @コスメストア:化粧水クチコミランキングの上位10商品の1ヵ月当たりのコストを算出して以下の表にまとめました。

図2
(2016/11/4時点)

パッと見た感じの第一印象となる表示価格と、1ヶ月分の実質価格で相対的に違いがあるのは、2位と8位と9位の商品で9位の商品がファンケルの化粧水です。パッと見の表示価格は低く、1ヵ月当たりの実質価格は相対的に見て高いことがわかります。

商品自体の顧客満足度も高いのでリピーターが多いので、この化粧水は累計379万本7秒に1本売れている人気商品となっています。しかし、この表現も内容量が一般的な110mlであれば累計103万本25秒に1本となり、そこまで圧倒的に売れている印象を受けません。少量を定期的に購入するので、全体の販売ボリュームが大きく、数字にインパクトを持たせることができます。

私たちの脳は情報の提示のされ方によって選択・選好の結果が異なり、行動経済学ではこれを「フレーミング効果」と呼ぶのだそうです。例えば、同じ豚肉を買うときに「赤身80%」と表記されたものと「脂肪分20%」と表記されたものだと、前者を選ぶ人が多いということが研究で実証されています。ファンケルの商品も、他社商品よりも少ない30mlにすることで、同様のフレーミング効果が作用して、パッと見た感じ「そこまで高くはない」と感じ、顧客の心理的なハードルを下げることができているのではないでしょうか。

同様に、効果的に販売実績を伝えたい場合、リアルタイムで売れていることを表現したかったら「〇秒に1本」という表現、今までに多くの人から支持されていることを表現したいのであれば「累計〇本」という表現を使うのが効果的です。セール表記でも、「2,506円(20%OFF)」と「3,132円→2,505円」で与える印象は異なり、一般的に、ブランド品や高級品は比率を表記し、低価格の商品は通常価格と割引価格の両方を表記したほうが効果的と言われています。しかし、コンテンツ内の他の要素との兼ね合いもあるので、ABテスト等で検証してみることをおすすめします。

以下に、ある同一商品のサイト別価格表示の例を示します。一緒に並んでいる他の商品の割引率が高いのか低いのかによって、20%OFF表記が効果的かは変わってくると思います。セールが終わった直後などのプロパー価格の商品が多い時期には、たとえ10%OFFでもオフ率をきちんと表記したほうが顧客の目に留まる可能性が高まります

図3

私たちの脳はちょっと違いにも影響を受けやすく、常に合理的な判断ができるとは限りません。表記の仕方一つで売上が大きく変わることもあります。どんなタイミングでどんな表記をすれば効果的に顧客の心理に訴えかけられるのか売り場担当者、マーケティング担当者は常に考え続けなければいけません。その際に行動経済学の考え方を少し取り入れると新しい切り口のヒントが見つかるのではないでしょうか。

オムニチャネル推進チーム
アソシエイト・コンサルタント

福島 江里奈

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