インサイト 2016-09-13

【後編】adidas Originals NMDが売り切れ続出!なぜ?:福島 江里奈

fukushima

インサイト(Insight) : 洞察、見識、知見

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売り切れが続出しているadidas Originals NMD
前回のインサイトでは、1. “スニーカーがよく見えない”スペシャルサイト 2.「かっこいい!欲しい!」のモチベーションのまま購入まで の切り口でNMDの人気の理由を考えてみました。

今回は、
3.意外と効果的?!COMING SOONの威力
4.「買いたくても買えない」存在
の切り口で、深掘りしていきたいと思います。

3.意外と効果的?!COMING SOONの威力

前回、スペシャルサイトのページ最下部からの購入導線について触れましたが、実は7月19日の新作発売までは「VIEW MORE」のボタンが「COMING SOON」となっていました。

また、遷移先に会員登録画面があり、登録すると15%OFFクーポンが配布され、メルマガで発売予告情報が届くという流れになっていました。配布されたクーポンの有効期限は8月10日で、NMDの新作を購入する際に使用することができました。

この記事を書いている現在も、次の新作をCOMING SOONとしてサイトに掲載しています。
9月8日のメルマガで『9月9日10時発売開始』という情報が届いたので、その後はサイト上に発売予定日時が記載されるようになりました。

▼発売日決定前の公式サイト
SnapCrab_NoName_2016-9-5_11-5-49_No-00画像出展元:http://shop.adidas.jp/originals/NMD/index.cgi

▼発売日決定後の公式サイト
SnapCrab_NoName_2016-9-9_9-51-56_No-00画像出展元:http://shop.adidas.jp/originals/NMD/index.cgi

スペシャルサイトを見てNMDに好意を持った消費者に、新作発売に合わせて公式オンラインショップ限定のクーポンを配布したり、発売情報をメルマガで告知したりすることで、発売前にある程度の動機付けをすることが可能です。詳細不明だからこそその後の動向が気になり、情報に対してアンテナを張るようになるので、プッシュ型のアプローチが効果的になると思います。

今すぐ手軽に買えることだけではなく、店頭では自分から聞かないと入手できない未発売商品の情報を得られることもECサイトの魅力です。発売後どこでも取り扱われるようになると、ポイント還元率が高いサイトや配送リードタイムの短いサイトが優位になりますが、事前に惹きつけておくことで、発売時に一番最初に思いつくサイトになることができます。

そのためにも、COMING SOONの段階でいかに消費者に自分の生活と関連付けて記憶してもらえるかがポイントとなります。自分事でないと人の記憶には残りません。NMDのスペシャルサイトは6組の全く異なるタイプの人々を取り上げることで幅広いタイプの消費者の自分事化ができているのではないでしょうか。

発売・オープン前の取り組みとして筆者が印象に残っているのは、東京ディズニーシーの『タワー・オブ・テラー』です。NMDの話からは多少ずれてしまいますが、他業界の事例として少しだけ触れさせていただきます。タワー・オブ・テラーは2006年9月4日の開業2ヶ月前からにラジオ、WEB、新聞の各メディアで以下3つの取り組みを行っていました。

1.2ヶ月前からラジオでアトラクションのバックグラインドストーリーを放送(全13話)
2.ホテルツアーを体験できるアドベンチャーゲームサイトを開設
3.都内(新宿、渋谷、東京駅周辺)で計3回号外新聞を配布

▼都内で配られた号外新聞
20121004_3080204

画像出展元:http://blog.jami-ru.com/?eid=856194

オープン前の取り組みが実際の集客にどれだけ影響を与えていたかを測るのは困難ですが、1~3のどれかに触れた消費者の認知と期待は高まっていたのではないでしょうか。このコンテンツはどれも「宣伝」「広告」感が前面に出ているのではなく、あくまでサービスを最大限に楽しんでもらうための事前情報として伝えられ、アトラクションにリアリティを持たせています。

消費者はサービス供給側から宣伝されていると感じとると多少なりとも嫌悪感を抱いてしまうので、オープン前コンテンツではなるべく第三者からの口コミで認知が広がるよう、だれかに話したくなる素材を提供することを目指すべきだと思います。

NMDのスペシャルサイトもタワー・オブ・テラーの事例も消費者がまだ見ぬサービス・商品を体感・体験している自分を想像することに貢献していると思います。商業施設などでも改装工事中に少しだけ中身が見えるようになっていたり、改装後のイメージ写真を大きく貼り出していたりするところがありますが、それもCOMING SOONがもたらす好奇心・期待・想像を開業時の集客につなげる効果的な取り組みだと思います。

4.「買いたくても買えない」存在

売り切れ続出中のNMDですが、買いたくても買えないことことマイナスイメージを持たれるのかと思いきや、再販を待ち望んでいるファンが増えている状況がレビューからうかがえます。買えない落胆から憧れに変わっているようにさえ思えます。(ちなみに、9月9日10時発売の新作は、発売開始1時間で14サイズ中12サイズが売り切れとなっており、一瞬でファンが殺到したことが伺えます)

最初の売り切れの時には購買モチベーションが一度下がったとしても、毎月のように新作発売の情報が届くので、次こそは買えるのではないかと期待を持ち直し、徐々に執着心が沸いてくるのではないでしょうか。執着心を持ち始めると売り切れで大きく落胆をすることはなく、「人気だから仕方ない」と高い購買モチベーションを維持するようになるのだと思います。

▼購買モチベーションのイメージ
モチベーション曲線

ただし、これは他社にない商品で独自のポジションを確立していることが前提です。コモディティ商品の場合、売り切れは顧客が離れてしまう原因になるので、需要がある限り在庫を切らさらない努力が求められます。また、売り切れ状態を放置しておくのではなく、短いスパンで新作を発売して消費者の憧れを切らさないことがポイントです。ファッションなどのオリジナリティが発揮できる商材では、「発売後すぐに売り切れるほど人気」はある意味でブランディングになるのではないでしょうか。

2回に分けての連載、いかがだったでしょうか?
読者の身近にも「なぜこのお店はこんなに人気なの?」「なぜこの商品はこんなに話題になっているの?」と疑問に思うことがあると思います。そんなときちょっとだけ思い出してもらえると嬉しいです。それではまた。

オムニチャネル推進チーム
アソシエイト・コンサルタント

福島 江里奈

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