インサイト 2016-01-12

第1回 ライフスタイルMDストアは今後どこへ向かうのか?『niko and…』店頭フェイス調査より:樋口進

higuchi

インサイト(Insight) : 洞察、見識、知見

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過当競争の渦中にさらされる商業施設
昨年12月10日に、東京都立川市に「ららぽーと立川立飛」がグランドオープンした。そしてその2ヶ月前には「ららぽーと海老名」がオープンするなど、今首都圏郊外は新SCの出店ラッシュである。そして2016年も仙台、福島、神奈川、千葉などで新しいSCのが続く。リアルIDさんの商業施設オープンカレンダー を参照いただきたい。
だが、海外事例を見れば明らかなように、既に国内商業施設もオーバーストアであり、消費市場が伸び悩む中での売場面積増大は、坪効率の悪化や集客力低下に容易に結びつく。以前にも増して他社SCとの差別化が必要とされる時代になったのだ。

変わりゆくスペシャリティストアMD
かつて、専門店の世界では、扱い品目を絞り込んで品揃えの幅を広げたり、テイストを強めて差別化を図る…という品揃え手法が一般的であった。しかし、生活者や時代が成熟し、モノへのこだわりや、モノでの差別性があまり求められない時代になってくると、単品の個性や品揃えの幅だけでの差別化が困難になってきた。

そんな中登場してきたのが
①大箱戦略
一つの店舗の売場面積をできるだけ広く取り、販売スタッフの保守坪数を拡げる。
②同伴者狙いMD
個人ではなくカップルやファミリーをターゲットとすることで、総合的な客単価を上げてゆく。
③ロット合成MD
レディス、メンズ、キッズの衣料品に同一の素材や同一製造工程を適用して生産ロットをまとめる。
④複合アイテム型MD
衣料品だけでなく、ファッション雑貨や生活雑貨も扱うことで客単価や客数を増加させる。
……の4つである

昨今のショッピングセンターに入っているテナント群を思い浮かべてみればよい。
かつて15年ほど前はレディス衣料専門店、メンズ衣料専門店、シューズ専門店、バッグ専門店、子供衣料専門店というように、個人×アイテムによって区分されたテナントが大多数を占めていた。だが、今は、レディス+メンズ+子供(ファミリーアイテム)を全て取り扱うのがあたりまえで、さらにバッグ、シューズ、服飾雑貨、生活雑貨、観葉植物などまで取り扱うのが一般的になっている。(さながら“百貨店”)
これらは一見すると、ひとつの店がカップルや家族の全ての生活ニーズを満たすように対応したと思われがちである。しかし、ここで考えて欲しい。広いショッピングセンター(多店舗型)の中で、その品揃えは本当に便利なのだろうか?一つの店しかないロードサイドの単独店舗ならそうであろう。しかしSCのような大規模商業施設でこのような「アイテムミックス店舗」が100店舗あったらどうなるか?

しかも、取り扱いアイテムは、単品で見てゆくとどれも似たり寄ったりのベーシックなモノばかりである。例えばバッグが欲しい生活者、帽子が欲しい生活者は、ありとあらゆる店舗を全て回らなければならなくなる。もちろんバッグ店舗や帽子店舗が全く無くなったわけではないが、かならずしもそこに全てのデザインバリエーションの商品が集まっているわけではない。アイテムが分散した巨大な売場の中でモノ目当ての消費者は途方に暮れるばかりである。
もちろん、テナント側の言い分はこうである!「うちのストアだけで買い物をして他には行かないで良いですよ!」……
でも、それでは大型のSCに来館した意味がない。これについては一部のファッション業界人も憂慮してるようだ。繊研新聞社さんの業界人アンケート をご覧いただきたい。

ライフスタイルMD・雑貨MD』はSCを救う? or つぶす?
StoreImage1シンクエージェントはこれらを総称して「ライフスタイルMDストア」と呼ぶことにする。そして、これらの店舗・業態が「本当に消費者にとってメリットがあるのか?」を検証するために店頭調査を開始した。本当にすばらしい品揃えで、お客様を惹き付け、購入単価も上がるのであればそれは大歓迎である。しかしライフスタイル風の演出の域を出ず、さほど魅力的な品揃えを構成していない『まやかし』『賑やかし』なのであればそれは大問題だ。それでは来館した生活者に不要な商品探索の手間をかけさせるからだ。これらを踏まえて、まず第1回はアダストリアホールディンググループの「niko and…」の店頭MDを評価してみた。

アパレル的雑貨MDの『niko and…』
Niko and 売場フェイス調査20160112

『プライベートギフト+携帯品+ファブリック+シーズンイベント』に絞った雑貨MD
ファッション系のSPA企業やセレクトショップが運営する雑貨業態は数多くある。その代表格が『niko and…』だろう。今回はフラッグシップストアである「niko and…TOKYO」(神宮前)の2F、雑貨中心のフロアを検証してみた。店舗全体は1Fと2Fにカフェが併設されている贅沢な作り。什器も特注の色合いが強く、様々なタイプ・スパン幅のものがミックスされている。見るべきポイントは、①雑貨のフェイス構成、②シーズン運用、③価格帯構成、であろう。まずは大きなゾーン構成と什器フェイスの構成量を見てみよう。

Niko&ゾーンゾーン別のフェイスバランスを見ると、「キッチンダイニング」と「ステーショナリー&トイ」が大きなウエイトを占めていることがわかる。意外だったのはエコ&リラクゼーションゾーンが思いのほか小さいことだ。女性ターゲットの生活雑貨業態ではこの辺やヘルスケア・カジュアルコスメが稼ぎ頭であるが、そこにはさほど力を入れていない。実際に店舗を見た印象で言うと、シーズンのイベント性に訴えるモノ、ファッションの次いで買いしたくなる携帯小物やステーショナリー(スマホアイテムも含めて)、そしてプライベートギフトアイテムが大部分を占めているということである。この辺はLOFT、フランフランなどの雑貨専業業態とはかなり異なるMD構成だ。さらに細かく売場編成を見たのが次の図である。

Niko&ブロック02

調査時期がクリスマスシーズンであったこともあり、フェースはシーズンデコレーションに多く占有されている。それ以外で高いシェアを持っているのは、「ブックメンテナンス」「ファブリック」「キッチン・おしゃれ食器」「バッグ」である。また、家具に大きな面積が割かれていることも注目だ。このMDを眺めて思うのは、旗艦店と稼ぎ頭であるSCテナント店との違いについてである。
私はグランツリー武蔵小杉店、ららぽーと豊洲店なども見ているが、これらSCテナント店の場合は主たるターゲットは子供のいるファミリー層である。その意味では同じアダストリアHDGの『studio CLIP』と共通している。異なるのは感度とクオリティであり、『niko and…』の方がアッパーゾーン狙いだ。
しかし、今回調査した神宮前の路面旗艦店に関して言えば、入店するターゲットは圧倒的にヤング層が多い。そこを考慮して本来の『子供&ママターゲットの雑貨MD』を大きくアレンジし直したとも思われる。ステーショナリー&トイの売場は正直間延びした印象があり、家具およびグリーンも他の店舗ではここまで揃えないであろうという印象である。

いずれにしても、王道の雑貨専業業態と比べると、良くも悪くもファッションストアが仕掛ける雑貨MDの範囲は超えていない。品揃えの方法論が、生活者に対して機能やシーンを提供するというよりも『テイストを強める』『スタイルとしてお洒落』に置かれているからだ。また、どうしても売り易いアイテムを厚くする方向に走っている。それが必ずしもマイナスとは言えないが、他の競合業態との同質化を招きやすいのは否めない。テイストをより強めるのであれば、オリジナル商品比率をさらに増やすべきであろう。
次回は、このMDとは真逆にある雑貨MD、ニトリの都心戦略店舗=ニトリ・プランタン銀座店を取り上げよう。

主席コンサルタント

樋口 進

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