インサイト 2018-06-21

激しさを増すファッションモール戦争【第ニ回】 ~SCの主導権の弱さがオンラインモールに付け入る隙を与えた:樋口 進

higuchi

インサイト(Insight) : 洞察、見識、知見

シンクエージェントでは、専門性の高い小売分野の知見から、日常のトレンドウォッチ、ファインディングまで、マーケティング、商品企画、販売、テクノロジーを横断する知見を日々公開していきます。皆様のご意見・ご感想などをぜひお寄せください。

第一回の記事では、オンラインモールにおけるマークダウン合戦の背景と市場への影響を考察してみた。第二回では、当のチェーンストアやSPA、リアルSC(ショッピングセンター)の持つ課題について言及してみたい。

リアルSCとファッションテナントの蜜月時代の終焉

実はファッション業界のオンライン消費(EC化率)はまだまだ15%に達してない。
消費のメインはSC内の実店舗である。
日本のSCはもともとは米国に習って開発された。米統治下の沖縄を除けば、60年代後半のダイエーによって建設された【香里ショッパーズプラザ】あたりが日本のSCのはしりである。既にSCが導入されてから半世紀が経過。日本のSCは米国ほどの車立地(郊外型)ではなく、ターミナル立地(駅ビル、ファッションビル)も多い。日本の通勤事情や交通機関の整備度ゆえ、土日集中買物ではなく、平日通勤帰りにSCに立ち寄るという行動も多い。

SCはむろん日本経済に大きな貢献を果たし、買物難民を減少させてきた。
しかし改めて行動マーケティング観点で見た時、SCが生活者のニーズに常に応えてきたか?と言うと疑問符が灯る。それはSC建設が消費者のニーズに応えるというよりも、不動産デベロッパーとテナントショップ、そして地方自治体等のもたれ合い構図(?)の中で拡大してきたからだ。そして筆者が指摘したいのは、SCの普及当初から変わることなく続く以下の考え………
ファッション顧客はまず店やブランドを選ぶ、または店やブランドにお客が着く⇒だからショップを増やせば売上があがる!……という既成概念だ。これは実体に即しているのだろうか?

気づけばSCは消費者のニーズやウォンツから遠ざかってきた。

読者に日本の大手量販店(イトーヨーカ堂やイオン)やニトリ等の大規模チェーンストアの店内をちょっと思い浮かべてもらいたい。
いずれも大規模で売場のフロアも分かれているが、自分の求める商品がどこにあるか?は非常にわかりやすく作られている。また、フロアマップを見てわからなければ、店内に居るスタッフに聞けば、すぐに答えが返ってくる。商品が一貫したルールでカテゴリー分類されているからだ。これを正確に言うと階層分類、小売業界用語ではライン・クラス分類と呼んでいる。

ショップのゾーン分類が不可能なSCが増えている!

SCもかつては、店舗の配置については『カテゴリー分類』がなされていた。というか分類することができたのだ。
かつてのショップは、靴屋、鞄屋、レディスの重衣料、レディスのカジュアル、帽子屋、おもちゃ屋、食料品店、布団屋、家具屋…のようにアイテム(品種)で分かれていたからだ。
しかし、今は違う。大手の専門店チェーンやSPA(製造小売業)は品種やターゲット(男女+年齢)を横断して品揃えするようになった。ライフスタイル提案型というお題目の元に、生活に使われる衣食住遊の全てのアイテムをひとつの店内で扱う。それは、その店で買うことを決めた人にとっては非常にベンリだ。しかしそんな人にとって、その店はSCの中に出店している必要はない。ロードサイドや駅前に単独店として出店すればよい。

衣料だけがテイストやスタイルの違いを理由に競合や淘汰が途絶?

今の大きな問題は、このような『マルチアイテムショップ』が、SCのファッションテナントの大半を占めるようになったことである。なので、特にブランドやショップにこだわりのない消費者は益々大型化する広大なSCの中を、目的のアイテムを探して歩き回らなければならなくなった。
もちろん、このマルチアイテムのコーディネートによって、ファッション市場が活性化されてきたことも否めない。女性の場合、新しい服に合わせるためにその他のコーディネートアイテムを揃えるというケースも珍しくない。ファッションストアの店頭VMDや接客技術もコーディネート購買を喚起するしくみの一部だと言っても良い。
しかし、ここまでベーシック色が強くなったファッション市場の中で、あたかも自分の店の中のアイテムだけでスタイルを完成せよ!(そもそも一緒に試着できない)と主張するような店作りは言ってみれば生活者無視ではないのか?


もう一度確認してみよう。
これを読んでいる読者の中で、自分はこの店でしか買わない、このブランドの熱狂的なファンなのでそれしか買わない…という読者はいるだろうか?特にファッションブランドに関して…。実はかなり少ないのではなかろうか?
もしそれが事実なら、その理由は今のマルチアイテムMIX型ストアは類似し過ぎているのだ。もしくはアイテムの幅を広げ過ぎているのだ。わかりやすい例を挙げる。
シューズショップで、ABCマートとASBeeとチヨダが並んでいる、または離れていても一緒に出店しているSCを想像できるだろうか?
今のファッションストアの出店はこれに近い状態になりつつある。メインの商材である洋服のテイストは類似してきているのに、小物や雑貨の味付け…(見せ方)で違うように見せている。しかし、無地のワンピースだけを取り出してみると、決定的にテイストやターゲットが異なるわけではない。これ、同じ場所に集めてもらった方が買いやすいんじゃない??
それこそが、オンラインモールが伸びている理由である。オンラインモールの持つ検索&アイテム分類、並べ替え機能だ。

生活者が買いやすい商業施設とはどんな施設?

ファッション以外の生活用品・雑貨やドラッグストア等の店が展開アイテムの幅を広げるのは理解できる。
実際に生活者にはその各アイテムが必要だから…、まとめてレジ1回で買える利便性(ワンストップショッピング)を提供しているからだ。
文具屋さんがビジネスグッズや携帯雑貨、装飾品などに幅を広げるのもまあ理解できる。それを専門に扱う店が少なく、被らないからだ。

しかしファッション屋がシューズや鞄や生活雑貨を扱うと必ず中途半端な品揃えになる。そして、そこで扱われるタイプのシューズやカバンは、SC内の50店以上の店に分散するという構造になるのだ。しかもそれは各店にとってサブアイテムでしかないので、差別性や独自性はさほどないことが多い。
これほど買いにくい売場があるだろうか?そして、オンラインモール(ZOZOやMagaseek)で、バッグや靴を検索したくなる生活者の気持ちがわかっただろうか?
オンラインならば当たり前のアイテムが集積した売場は、全国のどこの実SCにもないのだ。

SCの『いびつな売場構造』の隙をついたオンラインモール。

さて、長くなってきたので、ここまでの話をまとめてみる。

  • ファッションストアはアイテムミックスと売場表現で成長してきた
  • ファッションストアの成長に寄与してきたのはSC(ファッションビル含む)の存在
  • DCブランドのオンリーショップからセレクトショップへ主導権が移ったあたりから大箱化が進み、箱の中で試着して箱の中で買う…という色彩が強まった。
  • アイテムミックスは接客やVMDで商品を売るには都合がよい。しかし、アイテムにバラせば実は似通っているものを、売場の演出だけで競争せずに売るのは限界がある。
  • ファッションストアの難しさの一つは、選ぶ側の生活者にリテラシーギャップが激しいこと。
  • そもそも他店と比較しにくい構造を作ったのは業界としては競争しないための温室構造。
  • そのことが自分で判断して買物できないファッション消費者を増やしてしまった。

ここでようやく(苦笑)前回の続きの話に戻る。
オンラインモールが強烈な価格破壊を繰り返せる、かつ集客力を発揮できるのは、実はこの元々あったリアルSCとチェーンストアとの枠組みの穴をついたことと、その矛盾によって発生した大量の売れ残り在庫をネタにしているからなのだ。
なので、今の実SCとテナントショップは変わらなければならない。
在庫を残しまくっても成り立つ構造、自分の店舗だけで買ってくれることを前提とした構造を変える必要がある。

今後のSCとオンラインモールはどうなる?

……とここまで書いたところで例によって文字数が尽きた…。続きは第三回に譲るが、筆者が考えるオムニチャネル化した実SCのテナント構成を以下に
提示しておこう。詳細は次回!

弊社では、ファッション企業の経営の根幹にもかかわるデジタル戦略・オムニチャネル戦略を題材とする経営革新セミナーを以下企画している。ぜひ参加されたし。

Click Here!!

主席コンサルタント

樋口 進

バックナンバー


関連記事