インサイト 2018-06-13NEW

激しさを増すファッションモール戦争【第一回】 ~クーポン&タイムセール合戦の行き着く果ては?:樋口 進

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細かくて複雑な値引き合戦~危うい消耗戦に突入

まずは以下、ゾゾ、マガシーク、タカシマヤファッションスクエア、丸井Webチャンネル、&モールなど大手ファッションモールのクーポン発行やタイムセール状況を参照されたし。
この時期になると、
会員向けの夏のプレセール + ショップ毎のタイムセール + ショップ別値引きクーポン + 総合クーポン
の組み合わせによって値引き額が決まるしくみでかつ、それぞれ適用条件異なっている。
お客は買い上げ価格がいくらになるのか、決済直前の画面まで進んでみないとわからない!というのが実態だ。まるで通信キャリアの課金費用体系のように難解な構造を生んでしまったのだ。

オンラインモールのクーポン&タイムセール合戦

今は夏のセール直前だが、この状況は春夏シーズンイン直後の3月や4月でもさして変わらない。
これらクーポンやタイムセール乱発の背景とその影響は以下にまとめてみた。

裏事情
●期中の在庫調整とキャリー商品(前期、前々期…)の在庫処分
●ECサイトの構造(セール品抽出や価格順ソート)を睨んだ10%OFF、5%OFFなど作為的なマークダウン。
●在庫消化率アップ指令の弊害
●『天然素材<化合繊』の商品トレンドの中、シーズン性の喪失

消費行動への影響
●生活者の価格不振を招く、
●何がいつどこで安いのか誰もわからなくなる。
●ブランドバリューの崩壊
●ファッションのコモディティ化を助長。

生活者都合ではない“わかりにくい”価格競争

一貫性のないプライスダウンは、購買行動のトリガーにはなるが、お客様の混乱を招き、選択を間違わせる…。
消費者にとっては関係ない過剰在庫商品の期間限定プライスダウン、キャリー商品のセール延長も同じだ。リアル店舗の場合は売場の奥の方でサークル展開や什器とりまとめでこれらを特別扱いできるが、オンラインでは、プロパー商品以上にバナー訴求などで目立ってしまうため(モール側の集客ネタ)、消費者は、季節はずれであったとしてもセール商品の方に目が行ってしまう。

そして、チェーンストアやSPAにとって一番の問題は、大規模商業施設に出店している著名ショップやブランドへの価格と品質の信頼感が吹き飛んでしまうことだ。
低品質ブランドも高品質ブランドも『ごった煮の空間』に置かれて、アイテム目的購入の比較対象となってしまう。
正当に比較検討されるのなら、それで負けるのはしかたないが、スマホで見るオンラインの商品画像の画質は悪く、素材や縫製の品質などまでは伝わらない。目先の安さに釣られて購入するお客様も多い。

そして今モール運営者は総販売額を上げること以上に、テナント出店数を増やすことに躍起になっている。さらに、タイムセールやクーポン財源をテナントから獲得するのも営業の大きな仕事になっている。テイスト分類も、価格クラスも、今シーズンのトレンドも一切無視して一律に並べられるピンからキリのブランド
これは本当に消費者が望んだ姿だろうか?安ければOKというお客はどれだけ居るのか?弊社が直近に実施した調査をご参照いただきたい。(EC顧客調査

ファッションという商品ジャンルは消費者側の知見やテイストが細かく分かれている品種である。それを目の粗い投網をかけるような『マス・マーケティング的手法』でざっくり機能化したのがオンラインモールだ。
なので、志向性や付加価値よりも、共通価値である価格や投入タイミング、デリバリー時期にフォーカスが当たってしまう。

在庫処分のための値引きが必ずしも悪いというわけではない。
問題は、オンラインでの商品価値の伝達が不十分なために、『セールハンター』を量産してしまうことだ。リアルのSCや百貨店でも集客のための特価催事は良く行われる。しかしリアルで売れ残ったセール商品は、何度も試着されたり手に取られているため、プロパーの新着商品などよりも確実に見劣りする。
なので、セール集客で来館したお客がプロパー商品を購入するケースも多いのだ。今のオンラインUIではそのプロパーとセールの商品イメージにほとんど優劣がつかない。素材も天然繊維が減少して機能性素材が増えているので、ともすると秋冬商品と春夏商品の差も小さい
そんな中で同じ売場で新着商品とアウトレットを同時に扱うという、危険な試みを無意識にやってしまっているのだ。

小売チェーンやアパレルブランドは何をすべきか?

ここは根が深く、深刻な経営判断を伴う問題なので詳しくは第二回にゆずるが、概要の頭出しをしておこう。上記のオンラインモールチャネルの位置づけと、実店舗との関係値の置き方はファッション企業が数十年来判断を保留してきた以下の問題が絡んでくるのだ。
売場を守るのか?商品(Brand)を守るのか?という選択肢である。
詳細を洗い出してみよう。

  • SPA(商品ブランド)絶対主義を守るのか?
  • オンラインモールはアウトレット機能、直営ECや店舗はプロパー販売機能、…とチャネル分離する?
  • 再びかつての卸ビジネスを検討すべきではないか?ラックジョバー型サプライ。
  • 小売の領域を守るのならば、服を売るのか?生活を売るのか?はっきりさせるべし。
  • 服を売るならアイテム集積とそのグルーピング=編集力
  • ファッション啓発とトレーニングをやらないと服は売れない。
  • 生活を売るのなら、サービスミックス。自前主義では限界。

弊社では、ファッション企業の経営の根幹にもかかわるデジタル戦略・オムニチャネル戦略を題材とする経営革新セミナーを以下企画している。ぜひ参加されたし。

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主席コンサルタント

樋口 進

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