インサイト 2018-05-29

ZARAに学ぶ、消費者へのアプローチ手法の考察(前編): 千葉 良太

インサイト(Insight) : 洞察、見識、知見

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ZARAとはなにか?

皆さんは最近、洋服を買いましたか?ファッションを楽しんでいますか?私は買い物やファッションが趣味なので、気温の上昇とともにファッション熱も日々高まってきますが、最近はよくZARAに行きます。ファッション好きな人や良く買い物をする人にはお馴染みのZARAですが、知っている人もそうでない人も、今回は前編と後編に分けてZARAについて考察してみようというお話になりますので、どうぞ最後までお付き合いください。
ZARAはスペイン発の海外SPAファッションブランドで、インディテックスという企業が運営しています。ZARAを筆頭に全世界に7000以上の店舗を構え、2017年度の全体売上高は3兆4000億円を超え、言わずもがな世界でも有数のファッション企業として君臨しています。この数字だけみると、なんか凄いんだなぁという感想がまずは出てきそうですが、私が考えるZARAの凄さとは、消費者へのアプローチ手法の妙味にあると考えています。

 

なぜZARAで買い物をするのか?

消費者にZARAが支持される理由、それはZARAに対する消費者のイメージの多様性にあると考えられます。ZARAの店舗に行くと年齢層も10~50代と幅広く、おひとりさまや友人同士、カップルからファミリーまで、様々な人たちが来店していました。女性客が圧倒的に多いですが、男性客も少なからず見られますし、メンズコーナーがある店舗は男性客が多く見られます。また海外の人も他のアパレルショップ(免税店を除く)に比べると多く見られ、日本在住の外国人の方や訪日観光客のアジア系の方たちまで、実に多くの客層で店内が賑わっている状態になっていました。
先に書いた消費者のイメージの多様性について具体的に記していこうと思いますが、ZARAを利用する人たちの理由は実に様々です。例えば…
デザインがオシャレ/商品価格が安い/アイテムの種類が豊富/サイズ展開が自分に合う/トレンド商品が多い/品質が良い/商品陳列が見やすい/欲しい商品が探しやすい/店内が広い/どこにでも店舗がある/ECでも買える/アプリと連動している…etc.等々ではないかと思われます。…皆さん、気づきましたか?実はここに書き出した理由は、例えばUNIQLOや他SPAアパレルでも当てはまる内容です。でもZARAとUNIQLOや他SPAアパレルはどう考えてもイメージが違いますよね?それはなぜなのでしょうか?

 

ZARAのイメージは千差万別?

ZARAに対するイメージは上記に記載ように様々ありますが、それはUNIQLOや他SPAアパレルでも同様のように思います。でもZARAとUNIQLOや他SPAアパレルはファッションというカテゴリーでは同じですが、それはあくまで産業としてみた場合の見え方であって消費者目線では同じではありません。ではZARAとUNIQLOや他SPAアパレルの決定的な違いはなんなのでしょうか?
ZARAの消費者に対するアプローチはズバリ、イメージの掛け算だと考えられます。元々ZARAへの入り口になるイメージは誰でもひとつだと思います。ひとつでなかったとしても、その中で一番印象に残っているイメージを持って初ZARAを体験するはずです。そこからZARAはあらゆる手法で消費者のイメージにインプットを計ります。上記に記載した、デザイン/価格/サイズ/トレンド/買いやすさ…etc.そのどれもが消費者にとって刺さる要素を備えている点はストロングポイントでしょう。
例えば、ZARAで買い物をする人のマインドは【デザインがオシャレ×商品価格が安い×サイズが豊富×○○×○○…】となっていきます。人によって掛け算するイメージは千差万別ですし永遠に掛け算が続くことはないかと思いますが、逆に掛け算の回数もまた千差万別ですので、当然ZARAに対するイメージは多様性を持っていきます。そしてそれは、さながら消費者にZARAに対してのアウトプットを求めているようにも感じます。すなわち消費者が『ZARAは良いブランド』というイメージを作り上げていくアプローチを取っているところにあります。

 

またZARAのそういった根底には、良い商品(良い商品の定義は様々ありますが)をいかに消費者の手に早く届けるかを企業ミッションとして掲げているので、必然的にすべてのアプローチが高いレベルで行われる企業文化が成り立っているのではないかと考えられます。単純に企業規模が大きいとかグローバル企業だから発想が違うとか、そのレベルでZARAを見ると物見遊山になってしまいますが、単なる世界的なファッション企業という見方ではなく、一企業としてZARAはまさしく広く深く見ていく必要があると私は思います。 ちなみにUNIQLOや他SPAアパレルの消費者に対するアプローチについてですが、こちらは一極集中型が目立ちます。分かりやすい例であれば、価格訴求(1990円や2990円等)や週末目玉商品(週末限定価格)や高機能商材(ヒートテックやエアリズム等)で消費者に対して強いインパクトをインプットしていく手法です。この手法がけして悪いわけではありませんが、【UNIQLO=週末安い】とか【UNIQLO=ヒートテックorエアリズム】とか、ZARAのようにイメージが掛け合わさっていくようには残念ながら感じられません。もう少し客観的なイメージでお話するのであれば、ZARAは横に長くブランドイメージを消費者に対して訴求し続けているのに比べ、UNIQLOや他SPAアパレルは消費者の引っ掛かったポイントに対して縦に深くイメージを訴求し続けているといったところではないでしょうか。

 

ZARAはもはやツールなのかもしれない?

ここまでZARAの消費者に向けてのイメージアプローチについて書いてきましたが、普段、買い物をする時にいちいちZARAのイメージを想像したり自分の中で整理したりしてから買い物に行く人はどれくらいいるでしょうか?ほとんどの人はそういったことはしないのではないかと思います。本来の買い物は楽しい行動のひとつですし、ことファッションについては自分を表現するツールのひとつであると私は考えます。自分を表現するツールを使うときに潜在的に『とりあえずZARAに行こうかな?』と思った段階で、ZARAに対する自分なりの良質なイメージは完成されていると言えるでしょう。
それはすなわち、自分のファッションアイデンティティの中にZARAという存在を落とし込んでおり、自分を表現するためのツールとしての【ZARA】になっているのです。これがZARAのストロングポイントではないでしょうか。

次回の後編ではZARAが取り組んでいる具体的な手法について、参考にすべきポイントを深堀りしていこうと思います。
次回もまたお付き合いいただけると幸甚です。ありがとうございました。

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