インサイト 2017-11-28

リメイクとDIYがイマドキ女子に人気の理由とは:山居 菜穂絵

yamai

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最近「リメイク」や「カスタマイズ」が気になります。すでにあるものを作り替えたり、自分仕様にアレンジしたりする楽しさに目覚めた女性たちが存在感を増し、雑貨やインテリアトレンドに与える影響も見逃せなくなってきました。

欠けた器も、古いたんすも、伝統技法で生まれ変わる

「金継ぎ」という、割れたり欠けたりした器を漆で接着し金粉を蒔いて装飾する修復方法があります。元々は漆職人が茶道具など高価な品に施していたものですが、ここ数年は気軽に受講できる「金継ぎ教室」が増え、日常の器を自分で直して使いたいという女性たちで賑わっています。筆者も数年前に教室に通い、愛着のある器を何か月かかけて直しました。仕上げの装飾は金や銀だけではなく、日常使いの器に合う茶や朱色も可能で、修復方法にもひとりひとりの個性が表れます。欠けやひびを直した部分をあえて「景色」と呼び、新たな魅力を発見するという考え方も新鮮でしたし、何よりも割れてしまった器が自分仕様に生まれ変わるのにワクワクしました。

普通なら捨ててしまうような古い桐たんすをリメイクする職人さんもいます。三重県の「桐たんす工房おおいし」では、たんすを丸ごと湯で洗い、傷を修復し、砥の粉で再塗装するという古くからの技法を使って新品同様に再生しています。若い職人ご夫婦による小さな工房で、鉄脚を付けたりオイル塗装をしたりと、現代の住空間にも合う和モダンな家具にリメイクするオーダーにも応え、作業の様子をブログでもつづっています。技術とセンスがうかがえるホームページでの再生事例を見て関東や九州からも注文があるそうです。

この2つの事例に共通するポイントをまとめてみました。

・自作もしくは作り手との直接コミュニケーションにより細かいワガママがかなえられる
・伝統的な技術を自分のライフスタイルに合わせてアレンジできる
・リメイクによって、新品にはない新たな価値や魅力が不可される

断捨離ブームで「捨てること」がクローズアップされてきましたが、「再生して大切に使い続けること」にメリットを見出す動きの一例といえます。

DIY女子によるインテリアテイストの変化

インテリア分野でもリメイクを楽しむDIYがブームとなっています。インテリアテイストの主流は「北欧スタイル」ですが、この数年で急浮上しているのが「ブルックリンスタイル」です。倉庫や工場を改装したNYのショップをイメージしたもので「カフェ風インテリア」「男前インテリア」とも呼ばれています。この無骨で男性っぽいスタイルを支持しているのが、20-30代のDIY女子たちです。


古びた感じを出すために木材を塗装したり、レンガ調の壁紙シートを貼ったり、メニューボード風の黒板を作ったりと、100均ショップのアイテムを材料として使いお手軽にカフェ風インテリアを実現しています。ヴィンテージ感が持ち味なので、きれいに仕上げる必要はなく制作難易度が低い点も女性から支持されている一因かもしれません。北欧スタイルのキーアイテムがデザイナーの名作家具やモダン柄テキスタイルなど完成されたものであるのに対して、ブルックリンスタイルでは手作り感とミックス感がポイントとなっているのが特徴です。

ネットとリアルで広がるDIYサービス

こうした動きを受け、より本格的にDIYを楽しむ女性に向けたサービスが、ECでもリアルでも目立ってきました。ホームセンターのカインズでは、電動工具を備えた工作室や乾燥室付きのペイントルーム、さらには町工場のような溶接ルーム、3Dプリンターやレーザーカッターを設置したデジタル工房まで、あらゆるDIY作業をサポートする「CAINZ工房」を展開し、新たな顧客の獲得を図っています。

ネットでは数年前から女性をターゲットにしたDIYサイトやアプリが次々に登場しています。ユーザー投稿によるクックパッド型の「レシピ共有」サイトと、ウェブマガジン型の「ノウハウ提供」サイトが中心でしたが、両方の機能に加えてオンラインショッピング機能も持たせたサイトが存在感を増してきました。部屋を自分仕様にカスタマイズしたいというニーズは、今後も新たなサービスの広がりを予感させます。

代表的なDIYサイト

ファッションでもリメイク&カスタマイズは注目

最後に少しだけファッション分野の動きに触れておきます。スニーカーなど、パターンが類型化でき素材やパーツの組合せでオリジナリティを出せるアイテムでカスタマイズ化は先行していますが、新しく感じるのは以下のような事例です。
・デッドストック商品に古着やパーツを手仕事で取り付け新たな1着に蘇らせる「ビームスクチュール」
・良品計画の生産工程で出るハギレやB品に、アーティストによるデザインやイラストを施して再生するイデーの「プール」
・顧客が持ち込んだ自社デニムを店頭の洗い場で洗い、デニムを育てる楽しさを伝えるデンハムの「ハンドウォッシュサービス」

いずれもまだ実験的な意味合いが強いように感じますが、「手仕事」や「再生」にこだわった新ブランドやサービスが、感度の高い企業から立て続けに発信されているのは注目に値します。

完成されたオシャレなアイテムが簡単に手に入る時代に、あえて時間をかけたり、古いものを再生させたりする試みは、結局は「自分だけの1点物」が欲しいというニーズに帰結されるように思います。かつてのようにお金で手に入るブランド所有で勝負するのはダサいと感じ、自分なりのこだわりとスタイル(=個性)を重視するのがイマドキ女子たちの特徴だとしたら、同質化を避け「アナログな手仕事感」の価値を見直す20-30代女性の動きは今後の消費者トレンドを探る上でも欠かせないキーワードとなりそうです。

山居 菜穂絵

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