インサイト 2017-09-12

若者のファッション離れは本当?「リンクコーデ」と「古着ミックス」に注目:山居 菜穂絵

yamai

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服が売れない、若者がファッションに興味を持たなくなった、という話は耳にタコができるくらい聞こえてきます。本当にそうなのでしょうか。今回は「ファッション離れ」と言われる20-30代から支持されている2つの動きを取り上げてみます。

売れていないのは百貨店の服

日経新聞社の小売業調査によると、16年度決算では百貨店も大手アパレルメーカーも軒並み減収でした。こんなところから「服が売れなくなった」という話が広がっていくのですが、一方で、ファーストリテイリングやしまむら等の専門店は売上を伸ばし、「ゾゾタウン」のスタートトゥデイは前年から4割以上増収と大躍進でした。
売れていないのは百貨店を販路とする大手アパレルの服で、専門店やECではファッション市場はむしろ堅調・好調です。また市場規模3052億円(※)と推計されるCtoC(消費者間の個人売買)のフリマアプリでもファッションは人気カテゴリなのです。
百貨店のファッション市場が縮小する中、注目したいのがSNSやECで広がってきた「リンクコーデ」「古着ミックス」です。今回はこの2つのスタイルを詳しく見ていきましょう。
(※出典:経済産業省「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」)

カジュアルだけじゃない、親子だけじゃない『リンクコーデ』

「#リンクコーデ」はインスタグラムで人気のハッシュタグです。似た言葉に「ペアルック」と「双子コーデ」がありますが、『主に親子が対象』『色、柄、スタイリングなどで統一感を出す』ことが特徴で、20-30代の若い親世代を中心に広がってきました。

当初は大人と子供で共通化しやすいボーダーT、デニム、スニーカーなどがリンクアイテムの中心でした。シンプルでセンスが良くて、パパ、ママ、子どもの家族みんなで雰囲気を揃えた誰でも真似できそうなカジュアルスタイルが支持を集めたのです。
ところが、ここにきてアイテムやテイストに変化が起きています。トレンドをダイレクトに反映した女の子アイテムが目立ってきました。たとえば、マキシワンピ、刺繍ブラウス、重ね着キャミなど。ベーシックアイテムだけではマンネリになるスタイルに、これらのトレンド直球アイテムを入れることで、よりおしゃれで他の人と差別化が図れるリンクコーデが完成します。同時に家族全員のリンクコーデから、ママと娘で楽しむリンクコーデへと消費者の関心が移ってきたように見えます。

ブランドグループでいえば、ユニセックス系ファミリーカジュアルからママ娘系ガールズトレンドへの移行です。ザラ、H&Mなど大人っぽいガールズ服が得意なファストファッションに加え、ECで身近になった韓国子供服の人気により変化が加速しているようです。
韓国子供服に関しては、卒入学に使える上品ワンピースもパーティーや発表会用のキラキラドレスも3000円くらいで手に入ります。普段のお出かけからハレの場までリンクコーデをかなえる大人っぽい子供アイテムがプチプラで揃っているのが魅力です。ママたちの口コミで人気ブランドも生まれており、子供服やファミリー服を扱うショップにとって脅威になりつつあります。


ママ娘系リンクコーデが広がる一方で注目を集めている60代夫婦がいます。インスタグラムのフォロワー数が54万人を超えるbonpon511さんです。グレイヘアの夫婦によるリンクコーデは昔のペアルックとは一線を画し、おしゃれな着こなしに評判が高まり今秋には本の発売も予定されています。リンクコーデは、カワイイと思う感覚が近い母と娘、長く一緒にいて影響を受けあった妻と夫など、家族の中でもより密接な間柄の中で盛り上がりを見せているようです。

(出典:https://www.instagram.com/bonpon511/)

センスとコーディネート力が問われる『古着ミックス』

ゾゾタウンの古着ショップ「ゾゾユーズド」の売上高は前年比6割増の129億円(17年3月期決算)、2013年にサービスを開始したメルカリは前年比約3倍の122億円(16年6月期決算)と、BtoC、CtoCの違いはあっても20-30代をターゲットにしたリユース市場の成長は目を見張るものがあります。今年に入ってから、老舗ファッションECのマガシークもブランド古着の買取りと販売をスタートさせ、ゾゾに追随しています。
蚤の市が発展してきたロンドンやパリのように、日本の若い世代の間でも急速に古着への抵抗感が薄れているようです。最近はトレンドの変化も緩やかなので今年も十分通用する人気ブランドの服が安く買えるというのが一番の魅力でしょう。

一方で「価格」以外の魅力も注目されています。今の服にはない斬新なデザインや凝ったディテールにヴィンテージの1点物としての新しい価値を見出す動きです。先月青山の「ミツカルストア」で全国の古着ショップを集めた「Meets Local, Meets Vintage」というイベントがありました。いずれのショップも1点1点こだわって買い付けたことがわかるラインナップで、今の服にはないインパクトに目を奪われました。古着=低価格のお下がりだけではないということをあらためて認識するとともに、周囲に置いてあった現代物の服や小物ともコーディネートできる奥深さに感心しました。お店の方の話では、10代の学生から青山散策中のマダムまで幅広い世代から好評を得ているということでした。

「Meets Local, Meets Vintage」
オレンジのコートはDiorのヴィンテージ

阪急うめだ本店が婦人服フロアに「突撃洋服店」というモード系古着のポップアップショップを展開したり、ストライプインターナショナルが古着とオリジナル商品をミックスさせた業態「レベッカブティック」「ガレージ オブ グッド クロージング」を立ち上げたりと、企業の動きも目立ってきました。
もともと様々なブランドやテイストの異なるアイテムを自由に組み合わせるミックススタイルは日本人が得意とするもの。ちなみに前述のbonpon511さん、おしゃれなワードローブはユニクロやジーユー、そしてヤフオクや古着屋がほとんど、という事実に驚かされます。ミックススタイルを実践しているのは若者だけではないのです。

こうした動きを見てみると、プチプラ服でも古着でも上手にコーディネートしておしゃれに見せる、というファッションIQの高い消費者が増え、むしろ興味や関心が高いからこそ、単価が高いだけの服が売れなくなったということが本当なのではないのでしょうか。「ファッション離れ」という言葉だけが独り歩きして、消費者の実際の動きを見失うことのないようにしたいものです。

山居 菜穂絵

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