インサイト 2017-07-26

Instagramで『コト』を売る!~売り方を変えてゆくインスタ的表現と需要創造:樋口 進

higuchi

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直近数か月、インスタグラムの生活者に与える効果や影響度について様々な角度からレポートしてきているが、今回はその一環でインスタが変えつつある画像表現・商品訴求という観点を掲載する。
インスタグラムが普及・浸透するまでは、オンラインでの商品のビジュアル表現は、①物撮り一辺倒、②単なるイメージVisual、③コーディネート写真、のいずれかに当てはまるケースが大半だった。しかし、これだけでモノを売るのには限界がある。生活者が求めているのは、モノそのものではなく、それが提供する魅力的な生活シーンやそれを発信する伝達手段だったりするからだ。
また、生活者の側もインスタグラムを利用することで急速にプロなみの撮影テクニックを身に着けつつある。素人や生活者ならではの大胆な撮影発想も何の迷いもなく組み込んでくる。これらが、企業側とプロカメラマンが生み出すビジュアル表現を脅かしつつある状況なのだ。

インスタで受ける表現とは?

では、インスタで支持される表現、フォローやいいねを獲得しやすい表現とはどんなものがあるだろう?どんなエッセンスに人は反応するのだろうか?
洗い出してキーワード化してみると、以下のようなものが考えられる。

全て説明するのは一回では無理なので、今回はまず最初の4つを取り上げよう。

場面メイキング

インスタグラムはSNSの一分野ゆえヒト対ヒトのコミュニケーションがメインだ。その中で興味を引くネタとなるのはTwitterやFB同様に『その人が今何をしてるか』『どこにいるのか?』『どんなできごとがあったのか?』であろう。特に著名人やアーチストではなくて一般人であればこのウエイトがかなり高まる。なので『自分の出来事を伝える』が主要な発信になる。
その際にオーディエンスに見てもらうには、素敵なできごとや羨ましがられる場面、目を惹くシーンであることがが大事だ。
だからインスタグラマーは、フォトジェニックな場所を選んで、さらに効果的な演出をほどこして投稿の魅力を増そうとする。むろん、あまりにあざとい演出は嫌われるが、自分を盛ることを良しと感じるプリクラ世代以降の年代は脚色に余念がない。

素敵な生活場面を投稿するケースでは従来の記念撮影フォトなどと異なり、必ずしも自分や家族がメイン被写体とならない
美しいリゾート風景、イルミネーション、名所旧跡が主体となるときもある。自分や家族を映し込む際にも工夫をほどこす。子供やペットだけ入れるというのは良くあるが、さらに後ろ姿、足や手だけ入れる等…なんらかヒトの気配をさせる演出も受けが良い。
ビーチチェアにタオルを二枚かける、飲みかけのグラスが二つ(カップルを暗示)などもあるだろう。SNSでは家族を公開してる場合を除けば、誰と着てるかは隠したいケースもあるだろう。そのような暗示型の撮影スタイルが場面メイキングにおいては良く使われる。そしてそのための小道具が意外な売れ筋アイテムになりやすい。

群像劇

仲間数人が集まるとただの記念写真を投稿するだけでは終わらない。ここでも小道具が使われ、『群像劇』としての演出がなされる。そのモチーフはドラマのシーンだったり、映画のポスター風だったり、CDジャケット風だったりするかもしれない。小道具は帽子、ビーチアイテム、コスプレアイテム、など何らかの共通テーマを感じさせるアイテムが使われる。撮影は、各人が立体的に位置して、別の方向を向く、斜めにはいる、全員がジャンプなどのレイアウトのアレンジがなされる。

華のある生活

日常的なシーンのある瞬間を上手に切り取って魅力的に見せることができるのはスチル写真の得意技だ。
主たる被写体は子供やペットや料理だが、そこでは日常的であるがゆえに必ず『華』が加えられる。ちょっとした装飾アイテム、ドッキリ小物、巻物・包み物・かぶせ物、オーナメントやガーランド、そして子供やペットと相性が良い着ぐるみやシャボン玉、など。文字通り花も華として使われるが、あくまでも写真での演出なので取扱いが楽なフェイクフラワーやフェイクグリーンが使われたりする。背景演出に凝る場合は、安価な転写プリントシートも使われている。これらは全て百均で手に入るもの。百均のヒットアイテムの裏にインスタグラムありである。

遠近感と寄せ

ちょっとした違和感を与えて目を引くアングルや撮影手法として『遠近感』を強調する手がある。寝っ転がった姿勢で足元から煽るように撮影、広角レンズの利用、消失点まで引っ張る、被写界深度を深く(絞りを絞る)、遠近点をくっつけてのトリック効果、逆に遠または近を強くぼかす、等。
特に足元撮り、下からの煽り撮り、地面すれすれ撮りは良く使われる。いずれの場合も、遠(風景等)に対して近にポイントとなるキーアイテムが必要だ。それがシューズだったり、透明なグラスやポットだったり、花やグリーンだったりするのだ。

以上をまとめると、生活者が友達やフォロワーに対して伝えたいのは、モノではなくコト(正確にはシーン)である…ということをまず頭に入れよう。それは発信者の生活場面のヒトコマだったり、出会った人だったり、行った場所、店や参加イベント、あるいは日常習慣やTips等の時もある。そこに驚きや発見、喜びなどの伝えたいエモーションが加わるのだ。
もちろん裏を返せば結局自慢話のときも多いのだが、あまりあからさまなのは嫌われる。自分の生活を『ちょっと良く見せる』『目立たせる』というのがポイントなのだ。

主席コンサルタント

樋口 進

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