インサイト 2017-04-25

コト型消費~体験型消費は本当なのか?変わりゆく消費行動と小売業 その2:樋口 進

higuchi

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前回の記事では、コト型消費へ対応しようとする小売業を分類してみた。
また、SNSなどのデジタルコミュニケーション観点から見るとコト消費の方向性が自分アピールから生活充実に向かっているという話を描いた。
今回はさらに『コトのニーズ側』を詳細に深堀りしてみよう。

生活者が求める『コト』(シーン、ライフスタイル、体験)って何?

消費態度指数(出典:経済産業省)

上のグラフを見てもらいたい。ここ数年来、わずかながら回復傾向は見られるものの消費態度指数の低調はひきつづきであり、2007年以前の水準には達していない。その中で生活者がコトに使うお金は増えているのか?
モノあまり・モノ溢れの状態の中で、確かに新商品の発売くらいでは新しい消費は喚起されなくなった。『モノを所有すること、高いブランドを持つこと』を生活者は重視しなくなった…ということは、前記事のインスタ・コミュニケーション論を引用しなくても明白だろう。
それではお金の使い道はどう変わったのか?
生活者のコトに対するお金の使い方には以下のバリエーションがあるはずだ。

コトへのお金の使い道
①日常生活を楽しく快適に過ごすのに使う
②レジャーや余暇を楽しむ
③趣味を楽しむ/自分を磨く
④ライフイベントにお金を張り込む
⑤何かあったときのためにお金を貯めておく
⑥大きな人生の目標のためにお金を貯めておく

上記のどれを選択するかは?もちろん生活者のライフステージや志向性によって異なる。
現行のトレンドに紐付けて言うと、等身大消費ひと工夫消費は①~③、
そして高齢化+グローバル化で不確定度の高まった社会で増えていいるのが④~⑥だろう。
未来への備えである⑤と⑥を除き、さらにデイリー消費である①を除いたとして
この中で着目したいのは、②③④である。
これらは現日本人を構成するクラスター構造や価値観・志向性の違いが大きく影響を及ぼし、
かつテクノロジーやサービスが進展することで劇的に変化する可能性を秘めているからだ。

まず、②と③について言うと、新しく何かをスタートする際には『きちんとお金をかける』または『レンタルで済ませる』などの二極化。継続するための費用については『なるだけお金をかけない』という傾向が高まっているようだ。
かつては、継続そのものにお金のかかる趣味やレジャー・スポーツが多かったが、そこは変遷を遂げている。これも不確定性の高い変化社会、レジャーの多様化や短サイクル化が背景にある。

シェアリングエコノミーやレンタルサービスの例
カーシェア、エアクローゼット等のレンタルファッション、メルカリ等の中古ファションマッチング、Uber(ライドシェア)、民泊、ルームシェア、DogVacay等の預かり代行、おっさんレンタル等の人のシェア

そして④も二極化の傾向。『ライフイベントは一生に一度のオオゴト!』と考えている人はお金をかける。しかし、結構色々な経験を積んで、ライフイベントとは言っても必ずしも『一生に一度』ではない。と悟った人たちはお金をかけない。という感じだろう。具体的には、出会い(婚活)、結婚、子供の誕生、受験や入学、住宅の購入、独立起業、海外赴任などについて、お金をかける人と掛けない人のギャップが激しい。

支出言い訳の過去現在
【昔のお金をかける言い訳】これは(自分への)投資だから、リターンがあるはずだから
【今のお金をかける言い訳】家族のため、近しい人・友人のため
【経験値で差のでる言い訳】一生に一度だから、値段が下がらず後で売れるから

趣味やレジャーの種別でお金と時間の使い方が変わる!

ここで、コトで消費するかどうか?のベースとなる、趣味やレジャーにおけるお金のかかり方、もしくはかけ方をMapにしたものをご覧いただきたい。
もちろん、どんな趣味やレジャーでもお金をかけることも安上がりに済ませることも可能なので、あくまで筆者の独断による暫定MAPである。

趣味・レジャーMAP

右上の第一象限はお金も時間も使うもの、反対に左下の第三象限はお金も時間も使わないもの、である。
これを見る限り言えるのは、減少していると見られるのは左上の第四象限であり、第一象限は減っているのではなくむしろ増えている印象。
道具・ギアにお金を過度に投資することが減って、実質主義になったということであろう。そして第三象限は確実に拡充している印象を受ける。

まとめ: 今、消費停滞の背景として起こっていること

最後に、前回の記事も振り返りつつ、コト消費と呼ばれる現象、そしてその背景にある生活者のマインドやリード世代の変化をまとめてみる。

<現象/行動パタン>
●外食から内食・中食へ/外飲みから内飲みへ
●趣味が『消えモノ』や『道具に頼らない趣味』になった
●レジャーが屋外型かつ郊外型になった(都心在住が増えた)
●モノに連動していた蘊蓄やヒストリー等の訴求力が弱まった。
●モノ、コト、価値観、情報が多様化、ダイバーシティ重視。
●能力の基準(ものさし)が多様化・曖昧になり(分からなく)なった。
●友達の数や交友の広さが自慢ポイントになった。
<マインド/メンタリティ・世代特性変化>
●情報を集める気が薄れた。物事の価値基準に対して無関心になった。検索をあまりしなくなった。
●お金持ちよりもリア充が憧れの対象になった
●頭が良いことよりも、カラダが強いこと・心身が健康なことそれに伴う『行動力』『活力』が憧れになった。
●かっこいい行動や大人な行動を人に見せたいという意識が高いので、モノがあまり役に立たない。
●内面重視と言っているが、実は内面という名のSNSジェニック(SNS受けする行動や考え方)を重視してる。
●逆にモノの良し悪しに関する見識と評価眼力が弱まったので、そこは人に迎合しやすくなった。
●世界のまだ見ぬ誰かよりも、『身近な人の自分への評価』が大事。近しい人の心に残るイベントを催したい。
●自分の『仕上がり具合・盛り具合』をすごく重視する。仕上げるためにエネルギーを注ぐ。テイストよりもプロセスと完成度重視。

いかがだったろうか?異論反論もたくさんあるとは思うが、時代の変化を掴む一助になることを願いたい。生活者に対して提案する立場の事業会社にとっては、資本主義の原則として何らかの消費を喚起するのは至上命題である。
そしてそれは、形骸化しつつあるモノやブランドでなくても良いはずだ。人々の生活と心が豊かになる…と同時に消費も喚起されて経済が回る…というのがあるべき姿だろう。
そのためには技術のイノベーションだけではなく、マーケティングのイノベーションが必要と筆者は考える。モノが売れないことに嘆いてはいられないはずだ。コトを創造し、コトを支援する方向に目を向けていきたいと思う。

先記事でもご紹介したが、丁度一年前に弊社が調査した資料を以下に引用したい。

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主席コンサルタント

樋口 進

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